熱海、未来のタネをみつけに

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プラキャッチプロジェクトはこうして生まれた!

プラキャッチプロジェクトはこうして生まれた!

川から海に流れ込むぷらゴミを河口でキャッチしてしまおう!という、ユニークな熱海プラキャッチプロジェクトはどのようにして生まれたのでしょう? 本プロジェクトの生みの親である未来創造部・光村智弘代表に聞きました。

思いつくまで

  • 光村智弘(未来創造部代表)は、20数年前、熱海ビーチクリーン実行委員会の事務局長として、500人ぐらいの一般参加者とダイバーの参加者を得て、ビーチクリーン活動を行っていた。そのあと、ビーチクリーン実行委員会の事務局長を引き継ぎ、2012年9月から毎月第二日曜日(7・8月のぞく)に熱海ビーチクラブ開催時にビーチクリーンを行っている。
  • 本業であるマリーナの管理委託業務や、ビーチクリーン活動の取り組みから、「海岸にたどりついて収拾されるごみは、ごく一部にすぎない」ことを実感し、「これはなんとかしないといけない」と思うようになった。
  • 環境省のプラ問題への取り組み(プラスチックスマート)の情報のほか、理事を務める社団法人グリーンエネルギー推進協議会の海洋エネルギー分科会のリーダーとして、海洋ごみの現状や取り組みの内外の動画等を観て情報を集めるようになった。
  • 米国バルチモアでの「ミスター・トラッシュ・ホイール」や、洋上でプラごみを収集する「オーシャン・クリーンアップ」プロジェクトなどを知る。その中でも、「すごい!」と思ったのが、オーストラリアで、川の途中に網を張って流れてくるごみをキャッチし、引き上げて収集するという取り組みだった。
  • それを見て、「熱海でも採り入れられないか?」と思ったが、川でごみをキャッチすると、川でごみを引き上げる場所を作らないといけない。そうなると、クレーン付きトラックでの収集が必要になり、汚水の臭いが気になる人もいるだろうから、近隣の同意が必要になると思った。
  • 「どうしたらよいか?」と考えているうちに、自社は「マリンサービス」なのだから、得意領域である海でできればよいのではないかと思いついた。
  • 熱海港では、台風の時など港内にごみが散乱し、初島や大島に船を出している東海汽船も、漁船も迷惑している。利用側からの賛同も得やすいのではないか。
  • また、人通りの多い親水公園の近くで「プラキャッチ」をすることで、通りがかりの人たちも「何をしているのだろう?」と足を止め、ごみを集めていることを知れば、ごみの来し方行く末に思いが及ぶようになるのではないか。
  • 全国ビーチクラブネットワークの考え方も、「ごみを拾うこと」が目的でなく、ビーチコーミングなどを通して、ごみがどこから来たのかを考えることで、「子どもたちに"捨てない気持ち"を持ってもらうこと」が目的。同様に、河口でプラごみを収集することで、この問題を見える化したいと考えた。

必要なものー船、資金!

  • 熱海港に注ぐ糸川の河口には係船管が設置されているので、これに網をひっかけて河口に広げ、集まったごみを後ろに止めた船に引き上げる方法を考えた。自社の熱海マリンサービスには、ごみ収集に使える双胴船や、そのサポートをする和船がある。
  • 一方、備品を購入する資金が必要なため、理事を務めるグリーンエネルギー推進協議会にも相談し、イオン環境財団の第29回助成プログラムに応募し、審査に通り、49万円が2020年3月末に振り込まれた。これで必要な備品が購入できる!
  • 河口を使うには許可が必要だ。申請を出さなくてはならない。しかし河口は、河川法の管轄である川なのだろうか? 県土木事務所に聞いたところ、すぐにはわからず、調べてもらって、国道135号から海よりは「海」であることがわかった。最初は河川課に行ったが、港湾企画課に行き、必要な許可申請を出した。
  • 許可申請には、「近隣の同意」が必要だ。この河口でいえば、漁協、港に関係している事業者、東海汽船、青木建設、富士急、スパ・マリーナ熱海。これらすべての同意を得る必要がある。
  • 漁業権のある場所で何かを行う場合には、漁業補償を求められることも多いが、今回は漁業者もプラごみを迷惑だと思っていたこと、プラキャッチは商売でなくボランティアとしてやると漁協と30年以上お付き合いのある光村代表が説明したことで、快くOKを出してもらえた。
  • この糸川は漁業権が設定されていないため、漁業的には問題ないが、釣りや近隣から苦情が出る可能性がある。そこで、当初の実証実験ではネットを水深1メートルまでのところに張り、魚の行き来を妨げることがないようにする。

河口は川?それとも海? 近隣の同意は得られるか?

  • 河口を使用するためには専有料がかかる(68.64平方に対して年間1万5千円~2万円ほど)可能性があったが、公共に資する取り組みであると判断してもらい、減免で無料となった。
  • キャッチしたプラごみは網で船に引き上げるが、臭いなどの問題があるため、川の近くでは陸揚げせず、港の奥のほうに曳航してから引き上げることに。岸壁に船を着けてごみを上げるために、緊急連絡先リストをつくるなどして、岸壁の使用許可証を取得。

こうして、河口でのプラキャッチプロジェクトの準備が整ったのです。

次回は、熱海の河口で、どのようにプラごみをキャッチしようとしているのか、プラキャッチプロジェクトを具体的に紹介します。どうぞお楽しみに!