前回、環境問題でも自分のことでも、望ましい変化を創り出すためには、「熱い思い」と共に、具体的なスキル(力)が必要であることをお伝えしました。早速その一つ、ビジョンを描くスキルを紹介しましょう。
「ビジョン」とは、「目指す姿」ということです。同じように「ピアノが上手になりたい」といっても、「目指す姿」はどういうものか、人によってきっと違いますよね。頑張って目標に到達したとき、「何がどうなっているのか?」を具体的に考えることを「ビジョンを描く」と言います。
ビジョンの描き方には2種類あります。一つは半年後とか1年後ぐらいの近い未来について、現状を基に今からできることを考える「フォアキャスティング」という方法です。このビジョンは頑張れば達成できる。けれど、近い未来なので物事をガラッと大きく変えることはできません。ピアノの例で言えば、「この曲が弾けるようになったから、来年の発表会ではあの曲が弾きたい」というように、現状からちょっと先をめざす目標の立て方です。
今回、皆さんにぜひ伝えたいのは、もう一つの方法、遠い未来のビジョンの作り方です。例えば、「10年後どんな自分になっていたいか」「20年後どんな町になっていてほしいか」。この場合、まず現状や足りないものなどは脇に置いて、「全て思いがかなったとしたら、どうなっていたらいいかな?」と考えます。「バックキャスティング」というやり方で、これまでの延長線上にない未来を創り出したいときに有効です。ピアノの例では、「本当にできるのか、どうやってやるのか分からないけれど、将来はオーケストラと共演するようなピアニストになりたい!」というように。
さあ、いろいろ新しいことが始まる4月ですね。皆さんも自由にビジョンを描いて、新しい自分や未来を創っていきませんか。
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
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