
プラスチックの問題が大きく注目されるようになったきっかけは、2016年1月に行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)での研究者の発表でした。「このままいくと、2050年までに海の中のプラスチックの総重量は、魚の総重量を超える」と発表したのです。プラスチックはとても軽いのに、海の中にあるプラスチックの重さが魚全体の重さを超えるなんてオソロシイことですよね? これは大変な問題だ、ということで世界が動き出しました。
海洋を汚染するプラスチックには、海で発生するもの(ビーチで捨てられたビニール袋や、切れた釣り糸や流された浮き輪など)もあれば、陸上で発生したごみが風に飛ばされ、河川などから流れてたどり着いたものもあります。毎年 800万トンもプラごみが海に入っており、そのうち80%が陸上からきたものだそうです。「プラごみは海をめざす」のですね。
世界の海洋には、渦を巻いて流れて環流がいくつもあります。海洋を漂流するプラごみは、ぐるぐると回っている海流の大きなループに入るとその中にとどまるため、おびただしい量のプラごみがたまり続ける場所ができます。その最大のものが、米国カリフォルニア州沖合にある「巨大な太平洋ごみ海域(ベルト)」。2018年に発表されたオーシャン・クリーンアップの研究によると、この海域は日本が4つ、すっぽり入るほどの面積だそうです。目に見えやすい海面を漂流しているごみだけでなく、海のあらゆる深さにプラスチック汚染が存在しています。
オーシャン・クリーンアップがこの海域でごみを集めて分析したところ、質量でも個数でも、99.9%以上がプラスチックで、その中でラベルや表示が読み取れたものを調べたところ、9カ国語あったそうです。最も多かったのがなんと「日本語」でした! 日本からも大量のプラごみが流れ出てしまっているのですね。
当初はウミガメや海鳥など野生生物への影響が心配されていたプラスチック汚染ですが、今日では私たちの人体からも見つかるようになり、経済や社会への影響も大きくなっています。
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
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