
生物多様性を維持するには、さまざまな生態系のもと、さまざまな種が、さまざまな遺伝子を有して生きていけるようにする必要があります。しかし今、生物の絶滅スピードは「通常の1000倍」ともいわれる早さで進んでいます。哺乳類の2~3割、鳥類の1割、両生類の3~5割ほどが絶滅危惧種と聞くと、びっくりしませんか。
「少しぐらいなら」と思われるかもしれません。たしかに自分の身のまわりの動植物が1種類減っても、皆さんの生活に大きな影響はないかもしれません。でも、生き物は食べるー食べられるなどの関係でつながっています。花粉をつけてくれるハチがいなくなったら、花が咲いても実ができなくなってしまいます。そう思うと、「生物種が減っていくのは、飛んでいる飛行機のとめ具を1本ずつ抜いているようなもの」なのです。1本とめ具を抜けば、つながっているとめ具も抜けていく...。恐ろしいことです。
そういった状況を防ぐために、私たちは何ができるでしょうか。実は私たちは毎日、生物多様性に影響を与えています。どこで、どうやって作られたものを食べているか、着ているか、使っているか。そのすべてがつながっています。
例えば、静岡にとって大事な漁業も、世界中で生まれる魚の数よりもたくさんの魚を漁獲したり、魚のすみかを減らしたりしていると、続けられなくなるかもしれません。そこで、「魚を獲りすぎない」「すみかを守る」「獲るための決まりをしっかり守る」などのルールを守っている漁業を認証します、という「MSC認証制度」があります。認証された漁業で獲られた海産物にはMSC「海のエコラベル」というシールがついていますので、皆さんもスーパーなどで探してみてください。このラベルがついた魚を選んで買えば、豊かな海を守り、魚をおいしく食べ続けられることにつながります。
私たちの暮らしがいろいろな生物に支えられていることを知り、生物や生物多様性を守る商品を調べてみる。可能な時には、そういう商品を使ってみる。私たちの選び方しだいで生物や生物多様性を傷つけることも守ることもできるのです。そのためには「選ぶ力」を磨いて、伝えていきましょう!
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
【バックナンバー】
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未来を創り出す力 ① 『「変えたい」時 必要なこと』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ② 『10、20年後 どうなりたい?』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ③ 『物事のつながり考える』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ④ 『手段と目的 混同しない』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ⑤ 『答えを急がず 考え続ける』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ① 『温暖化を止める3箇条』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ② 『「熱海モデル」地域一体で』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ③ 『藻場再生 1億粒の種まき』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ④ 『「列島を海藻で囲む」挑戦』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ⑤ 『CO2炭にして「固定化」』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ① 『地球が沸騰した夏を経て』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ② 『地球を覆う膜 次第に厚く』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ③ 『CO2 世界中で排出急増』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ④ 『CO2削減 一人一人の力で』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ⑤ 『"地球号"の乗組員として』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ① 『社会の発展 支えた物質』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ② 『分解されず残り続ける』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ③ 『日本から米国沖まで流出』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ④ 『削減対策 日本は「奨励的」』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ⑤ 『ネット張り海への流出防止』(明日への環境Lesson/静岡新聞)