
SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうち、生物多様性に直結しているのはどれでしょう? ゴール14「海の豊かさを守ろう」と15「陸の豊かさも守ろう」ですね。
2016年までの間に、陸地の4分の3は改変、海の3分の2はかなりの影響を受け、湿地の85%は失われているそうです。特に沿岸の環境が大きな影響を受けており、サンゴ礁も枯渇の危機にあると言われています。では、どうやってこれらのマイナス面を転換していけばいいのでしょうか。
「ネイチャーポジティブ」という言葉を聞いたことがありますか? 生物多様性のマイナスをゼロに回復させるだけではなくて、プラスにしていくーという考え方です。また、22年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)目標」が採択されました。30年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようという目標です。まずは陸と海の保護区を守っていく。そして、マイナスをプラスに反転させるネイチャーポジティブを実現するーーこの流れは今後ますます強くなっていくでしょう。
生物多様性への取り組みは、目には見えないけれど、大切な「つながり」に気づくきっかけを、私たちに与えてくれています。生態系をはじめ、地球や私たちの暮らしを、その表面だけで捉えるのではなく、見えないものも含めて、さまざまな部分が絡み合った全体として見ることが必要です。そして言うまでもなく、「すべての命やさまざまな生き物そのものに価値がある」ということを意識しておかなければなりません。
地球の限界と折り合いをつけながら、限りある生態系を守っていく。社会や経済を不安定にすることなく、どうやって真に幸せな地域やまちを築いていけるか、一緒に考えていきましょう。
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2020年に移住した熱海市で環境教育に取り組む環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが、持続可能な社会をつくるために必要な力や知識を解説します。
【バックナンバー】
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未来を創り出す力 ① 『「変えたい」時 必要なこと』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ② 『10、20年後 どうなりたい?』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ③ 『物事のつながり考える』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ④ 『手段と目的 混同しない』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
未来を創り出す力 ⑤ 『答えを急がず 考え続ける』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ① 『温暖化を止める3箇条』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ② 『「熱海モデル」地域一体で』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ③ 『藻場再生 1億粒の種まき』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ④ 『「列島を海藻で囲む」挑戦』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
ブルーカーボン ⑤ 『CO2炭にして「固定化」』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ① 『地球が沸騰した夏を経て』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ② 『地球を覆う膜 次第に厚く』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ③ 『CO2 世界中で排出急増』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ④ 『CO2削減 一人一人の力で』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
温暖化 ⑤ 『"地球号"の乗組員として』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ① 『社会の発展 支えた物質』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ② 『分解されず残り続ける』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ③ 『日本から米国沖まで流出』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ④ 『削減対策 日本は「奨励的」』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
プラスチックごみ問題 ⑤ 『ネット張り海への流出防止』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
生物多様性 ① 『500万種以上が共生関係』(明日への環境Lesson/静岡新聞)
生物多様性 ② 『生態系サービスを享受』(明日への環境Lesson/静岡新聞)